肩腱板断裂について
今回は副島整形外科病院の森澤院長に肩に痛みが出たり、腕が上がらなくなる腱板断裂(けんばんだんれつ)について話を聞いてみました。
Q)肩の痛みや、腕が上がらなくなるなどの症状を引き起こす腱板断裂について教えて下さい。
A)腱板とは肩関節にある4つの筋肉の腱(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)から構成されているもので、これが損傷または断裂(裂けている)しているものが腱板断裂です。断裂といっても、実際に全ての腱が断裂しているケースは少なく、腱の一部が損傷または断裂(裂けている)しているケースが多いです。
Q)四十肩・五十肩とは違うのですか?
A)四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は肩関節周囲の組織に損傷や炎症が起こり痛みや拘縮等を引き起こす事の総称をいいます。ですので腱板断裂もいわゆる四十肩・五十肩に含まれます。MRIなどにより腱板に断裂が確認されると肩関節腱板断裂と診断されます。
Q)腱板断裂はどのようにして起こるのですか?
A)転倒などで肩を打ったり、重いものを持ち上げた時など外傷により起こる外傷性断裂と、加齢により腱板が脆くなって、だんだんと腱板が擦り切れたりする変性断裂があります。
Q)知らないうちに腱板断裂になっている事もあるという事ですか?
A)変性断裂の場合は、特にきっかけがない為、腱板が断裂しているとは思わずに治療している事がしばしばあり、なかなか良くならないことがあります。その為、腱板断裂が疑われるときは、レントゲン検査に加えて、MRI検査を実施して正確な診断が確定します。ペースメーカーを入れられたりしてMRI検査が実施できない方はエコー検査を実施する場合があります。
Q)腱板断裂の特有の症状などはありますか?
A)腱板断裂の特有の症状には
・腕を挙げる時、または挙げた状態から腕を下ろすときに、約60〜120度の位置で肩の痛みが生じる現象(ペインフルアークサイン)※動画
・腕を伸ばしたまま外側に腕を90°上げて、その状態でキープします。 その位置で腕をキープできなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろしてしまう現象(ドロップアームサイン)※動画
・肩を動かすと痛みや引っ掛かりがある
・腕を上げるときに対側の手で支えれば上がるが、自力では上げることができない
・手を伸ばして物を取る事ができない
・じっとしていても肩周りがズキズキする
・夜間、寝ている時に肩周りが・ズキズキして目が覚める
などの症状があります。
Q)治療はどのようなものがありますか??
A)注射、薬で炎症・痛みを抑えたり、リハビリなどの保存療法が基本となります。症状がひどい場合や、保存療法で症状が改善されない場合は、手術を行います。
Q)リハビリは具体的にどのようなことをするのですか?
A)硬くなった筋肉をほぐしたり、肩甲骨等をしっかりと動かして肩関節に負担をかけずに腕を上げる(代償動作)練習をしたり、残存している(断裂していない)腱板を鍛えて腕を上がりやすくしたりします。
Q)保存療法で症状が改善しなかった場合は手術になるのですか?
A)保存療法で症状が改善しなかった場合や、症状が非常に強く出ている場合、患者さんの希望がある場合は手術をご提案しています。
Q)どのような手術になるのですか?
A)当院では基本的に、関節用の内視鏡を使った関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)になります。1cm未満の穴を4~5カ所肩に開けて内視鏡を入れ、骨にアンカーと呼ばれる特殊な糸付きのスクリューを打ち込み、その糸で断裂した腱板を骨(上腕骨)に縫合します。
小さなカメラを関節に入れる「鏡視下手術」は、皮膚や筋肉を大きく切開する「直視下手術」と比べると身体への侵襲が少なく、術後の身体への負担が少ないとされています。
手術後は修復した腱板への負担を軽減するために装具を装着して日常生活を過ごすことになります。装着期間は約4〜6週間で断裂の大きさや、修復した腱板の状態のよって変わります。
Q)手術後はリハビリが必要でしょうか?
A)縫合部に負担がかからないリハビリは入院中早期より行われます。退院後は外来リハビリを約3〜4ヶ月程度行います。
Q)腱板が縫合できない場合などあるのでしょうか?
A)断裂している範囲が大きすぎたり、腱板の状態が悪いと縫合できない場合があります。
Q)その場合は手術ができないのですか?
A)2014年から、腱板断裂によって腕を上げる機能を失った肩関節の治療に使える人工関節が登場しました。リバース型人工肩関節という人工関節手術になります。リバース型人工肩関節につについては次回 池邉医師に説明して頂きたいと思います。池邉医師よろしくお願いします。
先生、今日は腱板断裂について教えて頂きありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。腱板断裂に限らず、肩のことで何かお悩みをかかえておられる方は一度ご受診して頂き、お気軽にご相談下さい。
副島整形外科病院 鏡視下腱板断裂手術 症例数 | |
年度 | 症例数 |
令和3年度 | 91例 |
令和4年度 | 59例 |
令和5年度 | 68例 |